「採用面接の場を和ませようと思って、ついプライベートな質問をしてしまった」
「インターンシップの学生だから、自社の社員向けのような厳しい規律は関係ないだろう」
もし、経営者様や自社の採用担当者がこのような認識を持っているとしたら、非常に危険です。
法改正により、ハラスメント対策の基準は年々厳格化しています。これまでは「自社の従業員」を守ることが中心だったセクシャルハラスメント防止措置ですが、2026年10月1日施行の改正男女雇用機会均等法により、その対象が「求職者やインターン生等」にまで大きく拡大し、全企業に防止措置が義務付けられます。
「知らなかった」では済まされない、中小企業が今すぐ取り組むべき【就活セクハラ防止】の重要性と、具体的な実務対応について解説します。
1. なぜ「求職者等」への対策が必要なのか?法改正の背景と対象範囲
これまでの法律(男女雇用機会均等法第11条)では、企業が措置を講じるべき対象は「自社が雇用する労働者」に限定されていました。しかし、立場が弱い求職者が企業の採用担当者などからセクハラを受ける「就活セクハラ」が社会問題化したことから、法律(改正法第13条)による厳しい義務化へと舵が切られました。
ここで特に注意が必要なのは、「守るべき対象(求職者等)」と「対策すべき場面(求職活動等)」の範囲が極めて広い点です。
① 対象となる「求職者等」とは?
- 自社の求人に応募してきた人(中途採用・新卒採用問わず)
- インターンシップの参加者
- 教育実習や看護実習などの実習生
- 会社説明会や、正式な応募前の段階にある学生
② 対策すべき「求職活動等」の場面とは?
対面の採用面接だけが対象ではありません。以下のような「職業選択に関わるすべての接点」が含まれます。
- オンライン面接やメール、SNS等でのやり取り
- OB・OG訪問、リクルーターによる個別の面談
- 内定後〜入社前に行われる懇親会や内定式
【注意!】
採用担当者だけでなく、「OB・OG訪問」を受ける一般の若手社員や、インターンを受け入れる現場の従業員が起こした問題であっても、企業は「措置義務違反」の責任を問われることになります。
2. 企業が今すぐ講じるべき「4つの必須措置」
厚生労働省の指針に基づき、すべての事業主は2026年10月までに以下の体制を整備しなければなりません。
| 措置の柱 | 具体的に企業が取り組むべき実務対応 |
| ① 方針の明確化と周知 | ・就活セクハラを「決して許さない」というトップの方針を社内に明文化する。 ・加害者となった従業員には、就業規則(懲戒規定)に基づき厳正に対処する旨を周知・啓発する。 |
| ② 採用活動ルールの策定 | ・面談の時間や場所の制限(「夜間のサシ飲み面談」の禁止など)。 ・連絡に用いるツールの指定(個人のLINEやSNSでのやり取り禁止など)。 |
| ③ 相談窓口の整備 | ・求職者やインターン生が利用できる**「専用の相談窓口」**を設置する。 ・求職者の目に触れる場所(採用サイトや募集要項、説明会資料など)に窓口を明示する。 |
| ④ 事後の迅速・適切な対応 | ・万が一相談があった場合、迅速に事実関係を調査する。 ・被害者への配慮(選考プロセスへの影響遮断など)と、加害者への適正な処分、再発防止策を行う。 |
これらに加え、「相談者のプライバシー保護」や、「事実確認に協力した従業員に対して不利益な取り扱い(解雇や減給など)をしないこと」を周知徹底することも義務付けられています。
3. 対策を怠ることで中小企業が被る「3つの致命的なリスク」
「うちは数人しか採用しないから後回しでいいや」という油断は、会社の存続を揺るがすリスクになりかねません。
- 【リスク1】深刻な人手不足(採用力の低下)今の求職者は、SNSや口コミサイトによる情報収集に非常に長けています。「あの会社の面接で不快な質問をされた」「就活ハラスメントへの対応が最悪だった」といった悪評は一瞬で拡散し、今後の採用活動が完全にストップしてしまう恐れがあります。
- 【リスク2】法的なペナルティと企業名の公表義務を怠り、是正勧告に従わない場合は、厚生労働省(労働局)によって企業名が公表されるリスクがあります。また、被害者から安全配慮義務違反等で損害賠償請求(民事訴訟)を起こされる可能性も排除できません。
- 【リスク3】社内エンゲージメントの低下採用現場でのハラスメントが放置されている職場は、既存の従業員にとっても「モラルの低い、安心して働けない環境」と映ります。結果として、優秀な既存社員の離職を招く引き金になります。
結び:健全な採用環境の構築は、企業の格を高めるチャンスです
ハラスメント防止体制を整えることは、単なる法義務への対応(守り)だけではありません。「求職者を大切にし、クリーンで公明正大な採用を行っている」という姿勢は、他社との差別化になり、優秀な人材を引き寄せる強力な武器(攻め)になります。
しかし、既存の社内向けハラスメント規程に「求職者も含む」と一行書き足すだけでは、今回の法改正への対応としては不十分です。
「自社の就業規則や採用マニュアル、どこをどう変えればいい?」
「求職者向けの相談窓口って、具体的にどう運用すればいいの?」
少しでも不安や疑問を感じられた経営者様は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。
私たちは、貴社の採用フローの実態に合わせたルールの策定から、法的に適切な就業規則の改定、採用担当者向けのアラート(チェックリスト)作成まで、社労士の専門的な知見から一気通貫でサポートいたします。法改正を機に、求職者からも社員からも選ばれる、安心で誠実な会社づくりを一緒に進めていきましょう。
貴社のハラスメント対策は万全ですか?
2026年10月の義務化に向けた現状診断や、就業規則の見直しに関するご相談は、右上のお問い合わせボタンよりお気軽にお問い合わせください。